レー半島は古くから海上交易の中心となり、南インドと中国文化の影響を強く受けてきた。そして、マラッカ海峡を巡るポルトガル、オランダ、英国の植民地時代。その歴史がこの国の食文化に大きな影響をあたえ、様々な料理、そして食材を生んだ。ここではその辺に焦点をあててみようってわけ。 


イーサン(魚生)




月に日本人がおせち料理を食べるように、マレーシアにも正月にこれを食べなきゃ一年が始まらないって料理がある。ただし、マレーシアって言っても中国系マレーシア人の話。つまり中華料理だ。その名は「イーサン(魚生)」これがとてもユニークな料理、いやその食べ方が実におかしい。中国正月は年明け(旧正月なので日本より一ヵ月半程遅い)から15日間と長く、その間はどこの中華レストランに行ってもこのイーサンってのが前菜で出てくる。逆に言えばこの二週間しか食べれない料理なのだ。中華料理は世界中で食べれるがこの料理、この習慣だけはマレーシアにしかない。中国正月にマレーシアにいる人だけの特権なのだ。それではそのユニーク料理「イーサン(魚生)」を紹介しよう!



まず、この料理は家族、会社、友達、とにかく正月に会った大勢の仲間で円卓を囲むところから始まる。まもなく色取りどりの具が山盛りにされた大きな皿が運ばれてくる。その具の正体は、大根、キュウリ、白身魚の刺身(店によってはサーモン)、ねぎ、ナッツ、ポメロ(日本のブンタンに似ている)の粒をほぐしたもの、そしてコリアンダーリーフ、赤ピーマン、赤と緑の寒天(無味無臭)、等ごちゃごちゃと入っている。そして、いよいよセレモニーが始まる。店員がこちらでいうアンパオ、日本でいうお年玉袋に入った調味料(塩、胡椒、白胡麻)をひとつずつ開け、その山盛りになった具の上に振りかける。円卓を囲む客はこの後のメインイベントを息をのんで待っている。店員は赤と緑のアンパオ袋の中身を全て振りかけると最後にカリッと揚げたゆばの様なものを山全体に散らし、特製甘ダレをサッと掛けてテーブルを後にする。

ここからは食べる側が主役で、最後の大事な作業に入る。皆、箸を手にして目を見合わせる。さぁぼちぼち行きますかって感じで...。そして、中腰でその大皿の上に山盛りにされた具を皆でニコニコ顔で混ぜ始める。混ぜる...とにかく全員でぐちゃぐちゃに混ぜる。この時にできるだけ高く箸で具を持ち上げる事がポイント。そして今年もビジネスがうまくいき、皆健康でいい一年でありますようにと合唱する。日本風に言えば商売繁盛、家内安全って感じだ。高く持ち上げれば上げるほど、この一年がうまくいくそうだ。ひとしきり混ぜるとそれぞれの皿に取り、食べ始める。しかし、食べる前にこの料理の本質は終わっている。食べる前のセレモニーがこの料理の主役であり、皆を幸せな、希望に満ちた気持にしてくれる年の初めの大事な役割を果たした所でお疲れ様といったところだ。とは言っても、これは前菜としてりっぱにおいしい料理であり、見事に後に続く料理にバトンタッチをしている。少々甘めではあるがこの料理自体へのファンは多い。

箸を合わせてかき混ぜるなんて事は日本では考えられない事だけど、これはこれで実にユニークであり、その中に入ってしまえば案外楽しい。商売繁盛を一番重んじる中国系らしい、食を絡めたセレモニーだと思いませんか? 参加して、味見をしてみたいと思うあなた!来年の2月にマレーシアで会いましょう。一緒に高く高く箸を掲げましょう!



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