ウチの親父は90歳で、すでにビジネスからは引退しているが、ほんの数年前まで自分の貿易会社で中国、マレーシア、オーストラリア、ギリシャなどから製品を輸入する貿易商を営んでいた。
定年前に独立して貿易会社を始めるまでは繊維系の専門商社や百貨店のバイヤーとして香港や北京、上海に長く駐在していた。
実家の本棚にはありとあらゆる中国と香港の書籍が並んでいて中国とのビジネスではテレビで解説したりするほどだった。
自分の人生のほぼ全てで中国と香港に関わってきた人である。
そして中国に騙され続けてきた人でもある。
どんなに現地に通って、現場の中国人たちと関係を築いて、時間をかけて商談をし、商品を確認して発注しても、東京港に届いた品物は偽物だったり、腐っていたりした。
「まだあと50年は中国と本当の意味で仕事ができるようにはならないだろう」
現役時代の親父の口癖だが、あれからもう50年近く経っている。
それを目の前で見聞きしてきたオイラは自分が独立しても中国とのビジネスには極めて慎重でいる。
少なくとも自分の判断で中国に拠点を出すことはしない。
ここしばらく急速に中国の脅威が増し、米中対立も先鋭化している。
中国の拠点で開発業務を行なっていたLINEが、「ユーザー情報が中国内で閲覧できる状況だった」として日本国内で大変なバッシングにあっている。
その余波もあって中国の拠点や提携会社を持つ日本の会社は現地開発ができにくい事態に陥っている。
そしてチャイナリクスの受け皿は東南アジア。
これを歴史上、なんどもなんども繰り返している。
リソースも豊富で人口も世界一。
魅力的な市場としてついつい進出したくなるが、それはそれは難しい市場なのだ。