芯を食ったホームラン

某日系メーカーのクライアントのフィリピンでの販売代理店に対するプレゼンテーションにはクライアントよりも30分早く販売代理店のオフィスに到着してしまい、早々にミーティングルームに通されてしまった。

受付係から「ちょうど社長も出社しました」と伝えられ、そのままミーティングルームで緊張して待つ。
しばらくすると一人の70歳にしては若く見える高齢者が入室してきた。
オイラはクライアントが到着する前にここで機嫌を損ねたらえらいことだと思い、ニコニコと会話を始めた。
彼もニコニコといろいろな体験談や若い頃の話をしてくれて機嫌は良さそうだった。
さらにオイラは彼の会社がこのクライアントの販売代理を始めた30年間を振り返り
「この30年、山あり谷あり、いろいろご苦労はあったでしょうねぇ」
とか
「30年前と言ったら、まだ学生じゃないですか?」
などとベタなおべんちゃらをかましながらとにかくプレゼン前に場を温めておこうと頑張っていた。

そうこうしてもうすぐ会議開始の時間だなと思った矢先、70歳にしてはちょっと若く見える高齢者が入室してきた。

どっちなんだい!

彼と一緒に入室してきた50代くらいのマネージャーが彼を

「弊社の社長です」

とオイラに紹介した。

オイラはずっとおべんちゃらを言っていた目の前の高齢者を見て、心の中で

「お前じゃないんかーい」

と思いっきり突っ込んだ。と同時にそれが可笑しくて笑えてきた。
後から入ってきた社長はやはりちょっと貫禄が優っていて、少し気圧されるほどだった。

会議参加者が揃うのを待つ時間。真ん中の青いシャツの方が社長でオイラの目の前の水色ボーダーの方がフェイク。


ほどなくクライアントも到着して、10人ちょっとを相手にオイラはプレゼンを開始した。

時折、社長の様子を伺い、頑固虫を拗らせてないかどうか気を遣う。

約40分のプレゼンを終え、緊張して社長の言葉を待った。

「誰か、質問や意見はないのか」

と社長が他のマネージャーたちを見回す。一同、シーンとしている。
こういう会社なのだ。ワンマン社長が全てを決める、誰も何も言わない。そういう会社なのだ。

「じゃあ、オレから言うが、とてもわかりやすい、素晴らしい提案だった。今まで我々も挑戦してこなかったが、やはり時代も変わった。我々も変わらなければならない。私はJunと一緒に仕事がしたい。具体的にいつから、何から始める?」

私はちょっと夢かもと思った。
心の中でガッツポーズをした。

オイラの横でクライアントの日本人が驚いた顔をしていた。
そして「ここまで良くやってくれました」とオイラに囁いた。
オイラが退室した後クライアントと販売代理店のメンバーで直接生臭い協議を行うため、オイラは彼らに手を振ってホテルに戻る。

そして、明日バンコクに戻る。
できることは全てやった。あとはクライアントと販売代理店の社長がまた喧嘩して今回の提案を破断にしてこないことを祈るのみである。
お願いします。

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